「一緒に逝こう!」——三浦義澄、悪友時政を道連れにせんとする怒涛の退場劇
大河ドラマ『鎌倉殿の13人』第30回。三浦の古豪・三浦義澄の最期は、盟友・北条時政との絶妙な掛け合いと水鳥コントを彷彿とさせる突き飛ばし。血みどろの権力闘争に咲いた怪演を語る。
2022年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』、毎週息が詰まるような権謀術数と宿老たちの粛清劇が続くなかで、8月放送の第30回は視聴者の腹筋と涙腺を同時に崩壊させる名場面を生み落としてくれた。 佐藤B作演じる三浦義澄の最期である。頼朝旗揚げ以来の盟友であり、悪友でもあった北条時政(坂東彌十郎)を前に、天寿を悟った義澄が「一緒に逝こう!」と掴みかかり、時政が必死で振り払って突き飛ばした拍子にそのまま息絶えるという、まさかの展開。かつての富士川の合戦での水鳥コントを思わせる軽妙さと、初期からの古参武士がまた一人去っていく無常観が絶妙にブレンドされ、SNS上でも「道連れ未遂w」「最高の退場劇」と惜しむ声が溢れ返った。 『吾妻鏡』を紐解けば、建仁三年(1203年)正月、義澄は七十七歳で病没したとあっさり記されるのみ。だがドラマでは、頼朝を支えた宿老十三人の合議制メンバーが次々と減り、早くも残り九人にまで絞り込まれる緊迫感のなかで、この老獪にして豪放な三浦党の長老に実に人間味あふれる幕引きを用意したわけだ。権力への執着と男同士の腐れ縁をここまで笑いと哀愁で描き切った三谷幸喜脚本と佐藤B作の怪演には、拍手を送らざるを得ない。
「一緒に逝こう!」——三浦義澄、悪友時政を道連れにせんとする怒涛の退場劇
大河ドラマ『鎌倉殿の13人』第30回。三浦の古豪・三浦義澄の最期は、盟友・北条時政との絶妙な掛け合いと水鳥コントを彷彿とさせる突き飛ばし。血みどろの権力闘争に咲いた怪演を語る。
2022年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』、毎週息が詰まるような権謀術数と宿老たちの粛清劇が続くなかで、8月放送の第30回は視聴者の腹筋と涙腺を同時に崩壊させる名場面を生み落としてくれた。 佐藤B作演じる三浦義澄の最期である。頼朝旗揚げ以来の盟友であり、悪友でもあった北条時政(坂東彌十郎)を前に、天寿を悟った義澄が「一緒に逝こう!」と掴みかかり、時政が必死で振り払って突き飛ばした拍子にそのまま息絶えるという、まさかの展開。かつての富士川の合戦での水鳥コントを思わせる軽妙さと、初期からの古参武士がまた一人去っていく無常観が絶妙にブレンドされ、SNS上でも「道連れ未遂w」「最高の退場劇」と惜しむ声が溢れ返った。 『吾妻鏡』を紐解けば、建仁三年(1203年)正月、義澄は七十七歳で病没したとあっさり記されるのみ。だがドラマでは、頼朝を支えた宿老十三人の合議制メンバーが次々と減り、早くも残り九人にまで絞り込まれる緊迫感のなかで、この老獪にして豪放な三浦党の長老に実に人間味あふれる幕引きを用意したわけだ。権力への執着と男同士の腐れ縁をここまで笑いと哀愁で描き切った三谷幸喜脚本と佐藤B作の怪演には、拍手を送らざるを得ない。
安達盛長
源頼朝の伊豆配流時代からの側近。寡黙にして実直に仕え抜いた宿老
今号の「こんな人、知っていますか」は安達盛長。大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では野添義弘さんが温厚かつ寡黙な側近として演じ、三浦義澄とほぼ同じ時期に退場したことで話題になりました。 頼朝が伊豆の蛭ヶ小島に流されていた苦節の時代から影のように寄り添い、北条政子との文の取り次ぎ役まで務めた忠義の臣。鎌倉幕府草創後は十三人の合議制にも名を連ねましたが、頼朝の死の翌年、後を追うように世を去りました。派手な武功名乗りこそ少ないものの、頼朝の最も個人的な胸中を知り抜いていた最側近の生涯は、鎌倉初期の武士たちの無骨な絆を今に伝えています。
安達盛長
源頼朝の伊豆配流時代からの側近。寡黙にして実直に仕え抜いた宿老
今号の「こんな人、知っていますか」は安達盛長。大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では野添義弘さんが温厚かつ寡黙な側近として演じ、三浦義澄とほぼ同じ時期に退場したことで話題になりました。 頼朝が伊豆の蛭ヶ小島に流されていた苦節の時代から影のように寄り添い、北条政子との文の取り次ぎ役まで務めた忠義の臣。鎌倉幕府草創後は十三人の合議制にも名を連ねましたが、頼朝の死の翌年、後を追うように世を去りました。派手な武功名乗りこそ少ないものの、頼朝の最も個人的な胸中を知り抜いていた最側近の生涯は、鎌倉初期の武士たちの無骨な絆を今に伝えています。
海と台地に覇を唱えた相模の名族、その興亡の真実——高橋秀樹『三浦一族の中世』
源頼朝を支え幕府創設に貢献した三浦義澄、権謀術数の義村、そして宝治合戦の悲劇へ。鎌倉武士団の典型たる三浦氏の盛衰を史料から再構築した本格研究書。
吉川弘文館の歴史文化ライブラリーより刊行された高橋秀樹氏の『三浦一族の中世』は、鎌倉幕府の創業から北条氏との壮絶な権力闘争に至るまで、東国武士団の雄として確固たる地歩を築いた三浦一族の通史を、丹念な古文書考証に基づいて描き直した労作である。 相模湾の海上水運と三浦半島の要害を押さえ、治承・寿永の内乱において源頼朝の挙兵を武力で支えた義澄ら初期の長老たち。頼朝没後は十三人の合議制に名を連ね、畠山重忠の乱や和田合戦などの粛清劇を生き延びた三浦義村の狡知。そして五代将軍・宗尊親王擁立をめぐる宝治合戦(1247年)における本宗家の劇的な滅亡と、傍系佐原氏による家名の存続まで、一族のダイナミックな命運が克明に追われる。 『吾妻鏡』の記述を鵜呑みにせず、全国に残る所領関係文書や系図の矛盾を突き合わせる著者の筆致は、考証の立場からも極めて小気味がよい。坂東武者が抱いた血縁の結束と、所領をめぐる骨肉の争いという中世社会の生々しいリアルが浮き彫りになる。 大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で三浦党の豪放な生き様に惹かれた読者にとって、虚構の物語を越えた本物の武士たちの執念と宿命を知るための必読書と言えよう。
海と台地に覇を唱えた相模の名族、その興亡の真実——高橋秀樹『三浦一族の中世』
源頼朝を支え幕府創設に貢献した三浦義澄、権謀術数の義村、そして宝治合戦の悲劇へ。鎌倉武士団の典型たる三浦氏の盛衰を史料から再構築した本格研究書。
吉川弘文館の歴史文化ライブラリーより刊行された高橋秀樹氏の『三浦一族の中世』は、鎌倉幕府の創業から北条氏との壮絶な権力闘争に至るまで、東国武士団の雄として確固たる地歩を築いた三浦一族の通史を、丹念な古文書考証に基づいて描き直した労作である。 相模湾の海上水運と三浦半島の要害を押さえ、治承・寿永の内乱において源頼朝の挙兵を武力で支えた義澄ら初期の長老たち。頼朝没後は十三人の合議制に名を連ね、畠山重忠の乱や和田合戦などの粛清劇を生き延びた三浦義村の狡知。そして五代将軍・宗尊親王擁立をめぐる宝治合戦(1247年)における本宗家の劇的な滅亡と、傍系佐原氏による家名の存続まで、一族のダイナミックな命運が克明に追われる。 『吾妻鏡』の記述を鵜呑みにせず、全国に残る所領関係文書や系図の矛盾を突き合わせる著者の筆致は、考証の立場からも極めて小気味がよい。坂東武者が抱いた血縁の結束と、所領をめぐる骨肉の争いという中世社会の生々しいリアルが浮き彫りになる。 大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で三浦党の豪放な生き様に惹かれた読者にとって、虚構の物語を越えた本物の武士たちの執念と宿命を知るための必読書と言えよう。
道連れに せんと掴みて 突き飛ばし 笑いと涙の 坂東武者かな
─ 相模の波乗り ─
道連れに せんと掴みて 突き飛ばし 笑いと涙の 坂東武者かな
─ 相模の波乗り ─
厳しい残暑の続く葉月、2022年8月号をお届けいたします。大河ドラマ『鎌倉殿の13人』もいよいよ血で血を洗う後半戦に突入、初期から頼朝を支え続けた三浦義澄や安達盛長ら愛すべき宿老たちが次々に世を去っていく展開に、毎週胸を締め付けられております。三浦義澄と北条時政のあの最期のやり取り、切なさと笑いが同居した坂東武者らしい実に見事な幕引きでございました。奈良・興福寺五重塔の百二十年ぶり大修理や、軽井沢のレーモンド建築をめぐる話題など、古都の祈りと近現代の造形美に触れる夏の旅情も揃いました。秋風の気配を待ちわびつつ、涼しい室内での歴史読書をどうぞお楽しみください。
厳しい残暑の続く葉月、2022年8月号をお届けいたします。大河ドラマ『鎌倉殿の13人』もいよいよ血で血を洗う後半戦に突入、初期から頼朝を支え続けた三浦義澄や安達盛長ら愛すべき宿老たちが次々に世を去っていく展開に、毎週胸を締め付けられております。三浦義澄と北条時政のあの最期のやり取り、切なさと笑いが同居した坂東武者らしい実に見事な幕引きでございました。奈良・興福寺五重塔の百二十年ぶり大修理や、軽井沢のレーモンド建築をめぐる話題など、古都の祈りと近現代の造形美に触れる夏の旅情も揃いました。秋風の気配を待ちわびつつ、涼しい室内での歴史読書をどうぞお楽しみください。