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2022年10月号

バックナンバー
編集長: 木村蒹葭堂(大坂)

特集.txt - メモ帳
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【特集】玉木文之進と松下村塾の原点 ・ 初出: 2022年10月

松陰を育てた鬼叔父・玉木文之進——「松下村塾の50年」展が照らす過激な教育精神

長州萩の至誠館で特別展「松下村塾の50年」開催。初公開された「緑野堂記」や松陰神社の特別御朱印から、吉田松陰の精神的支柱となった叔父・玉木文之進の苛烈なる志を辿る。

2022年10月、長州・萩の地で幕末史ファン必見の展覧会が幕を開けた。至誠館大学で開催された特別展「松下村塾の50年」である。目玉となったのは、これまで所在が不明とされていた松下村塾の創設記録「緑野堂記」の初一般公開だ。 松下村塾といえば吉田松陰の私塾として世に知られるが、もともと天保13年(1842)に松本村の自宅に塾を開いたのは、松陰の実の叔父にあたる長州藩士・玉木文之進であった。この文之進、幼き松陰への教育ぶりが凄まじい。読書中に頬を刺した蚊を無意識に叩いた幼い松陰に対し、「己の痒さを我慢できずに公の読書を怠るとは何事か」と激怒し、容赦なく拳を振るったという逸話はあまりに有名である。私情を滅して公に殉ずるという文之進の峻烈極まりない倫理観が、のちの松陰の狂熱的な至誠の思想を涵養したことは疑いない。 萩の松陰神社でも秋の例大祭にあわせて限定御朱印が授与されるなど、維新回天の震源地となった学び舎への関心が再び高まった。厳格すぎる叔父の薫陶と、それを受け継いで高杉晋作や久坂玄瑞ら塾生たちの魂に火をつけた松陰。維新後に教え子たちが起こした「萩の乱」の責任を取って自刃した文之進の生涯も含め、幕末の志士たちを輩出した過激な教育の原点を振り返る好機となった。

#玉木文之進#吉田松陰#松下村塾#長州藩#幕末史
かわら版
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歴史かわら版 ・ 2022年10月

江戸後期の洋風画家・亜欧堂田善、銅版画の超絶技巧に光

白河藩主・松平定信の命で西洋銅版画技法を習得した亜欧堂田善。東都名所図や精密な解剖図など、近世日本の蘭学美術の到達点を示す作品群の展示企画が各地で話題に。

かわら版.txt - メモ帳
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歴史かわら版 ・ 2022年10月

日本の鉄道開業150年、新橋・横浜の遺構や記念列車に鉄道ファン熱狂

明治5年(1872)10月14日に新橋・横浜間で日本初の鉄道が走ってから150周年。旧新橋停車場跡地での記念行事やJR各社の特別企画列車が走り、日本の近代交通史の歩みに熱い視線が注がれた。

今月のこんな人.txt - メモ帳
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今月のこんな人、知っていますか?

玉木文之進

松陰を育てた峻烈の儒者。自ら創設した松下村塾の門弟たちを見届けた頑固一徹

今号の「こんな人、知っていますか」は特集でも取り上げた玉木文之進。吉田松陰の実父・杉百合之助の弟にあたり、玉木家の養子となって藩政に尽くしました。 その教育は苛烈の一語で、甥の松陰だけでなく、親戚や近所の子弟にも一切妥協のない儒学・兵学講義を施しました。松陰が刑死したあとも生き長らえ、明治維新後に萩の乱が起こると、松下村塾出身の前原一誠らが叛乱を起こした責任を取り、先祖の墓前で自刃するという凄絶な最期を遂げています。維新という巨大な嵐の起点となり、その結末をも己の命で引き受けた「長州の頑固親父」の生き様は、幕末のもう一つの深淵を感じさせます。

#玉木文之進#松下村塾#長州藩#萩の乱
書籍紹介.txt - メモ帳
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書籍紹介 ・ 『吉田松陰と松下村塾』海原徹著(ミネルヴァ書房)

英雄伝説のベールを剥ぐ——海原徹『吉田松陰と松下村塾』が明かす教育の原点

玉木文之進による創設から吉田松陰の情熱、そして塾生たちの激動まで。松下村塾の実態を教育史の第一人者が一次史料から解き明かした決定版。

長州萩の片隅に佇む小さな私塾・松下村塾が、なぜ近代日本を揺るがす数多の逸材を輩出し得たのか。今号の特集で叔父・玉木文之進の苛烈な薫陶を取り上げたが、その教育の真髄と塾の全体像を冷静な筆致で解き明かしてくれるのが本書である。 著者の海原徹氏は長州・萩の教育史研究に生涯を捧げた碩学。本書では、松陰の狂熱的なカリスマ性ばかりを強調する英雄伝的俗説を排し、塾の創設者である玉木文之進の謹厳実直な兵学・儒学の土台や、松陰が獄中および実家で塾生たちと交わした対話の記録を丹念に読み解いている。身分や階級にとらわれず、農民や町人の子弟も等しく机を並べ、互いの意見をぶつけ合わせた「飛耳長目」の現場が鮮やかに甦る。 私・蒹葭堂もかつて大坂で町衆や武士、学者たちと身分の垣根なく文物を語り合ったが、人が集まり熱気を帯びる場には共通の磁場があるものだ。教育とは知識を一方的に教え込むことではなく、志に火を点けることなのだと、歴史の原点を痛感させられる好著である。

#吉田松陰#松下村塾#玉木文之進#幕末#教育史
投稿狂歌.txt - メモ帳
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投稿狂歌コーナー ・ お題「玉木文之進の拳教育」

蚊を討ちて 拳飛び交う 学び舎に 至誠の志 研ぎ澄まされむ

─ 萩の長屋住まい ─

投稿狂歌.txt - メモ帳
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投稿狂歌コーナー ・ お題「鉄道150年の汽笛」

煙吐き 陸蒸気の 響きより 百五十年の 線路遙けし

─ 汐留の車掌 ─

編集後記.txt - メモ帳
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2022年10月号をお届けします。萩・至誠館での「松下村塾の50年」展、初公開の緑野堂記の文字を見ておりますと、松陰やその師・玉木文之進たちの張り詰めた熱情が紙面から立ち上ってくるようでした。そして10月初頭にはアントニオ猪木さんの訃報。プロレスという枠を超えて戦後昭和史そのものを体現された巨星の旅立ちに、ひとつの時代が終わった寂しさを覚えずにはいられません。秋の夜長、歴史の深遠に思いを馳せていただければ幸いです。