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2017年10月号

バックナンバー
編集長: 木村蒹葭堂(大坂)

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【特集】宗教改革500年とマルティン・ルター ・ 初出: 2017年7月〜2017年10月

一枚の貼り紙から五百年——ルターの「95カ条の論題」と、出島に来たオランダ人

1517年10月31日、マルティン・ルターが「95カ条の論題」を公にしてから、ちょうど500年。ドイツのウィッテンベルクで記念式典が開かれた。遠い欧州の話のようでいて、江戸の日本とも無縁ではない出来事をふりかえる。

10月31日といえば、近ごろはすっかりハロウィンの日になってしもた。けれど今年ばかりは、もう一つの記念日のほうに目を向けておきたい。 1517年のこの日、ドイツの修道士マルティン・ルター(1483〜1546)が「95カ条の論題」を公にした。宗教改革の発端となった出来事で、今年はそれからちょうど500年にあたる。当日はドイツ東部のウィッテンベルクで記念式典が開かれ、「信仰の自由」への願いがあらためて語られたという。 ルターが問題にしたのは、ローマ教会が発行していた贖宥状だ。日本では「免罪符」の名で知られているが、正しくは罪そのものを消す札ではなく、罪に科せられた罰を代わりに果たしたことを証す書き付けだった、という説明を今年あらためて読んで、なるほどと膝を打った。名前ひとつで、ずいぶん印象が変わるもんやなあ。 さて、ここからは大坂の物好きとしての寄り道。ルターに始まる流れは、やがてプロテスタントの諸派を生み、オランダもその側に立った。江戸幕府がキリスト教を禁じたあとも、オランダ人だけが長崎の出島で交易を許されたのは、布教より商売を優先したからだとよくいわれる。つまり、うちらが蘭書や舶来の珍品を手にできたのも、元をたどれば五百年前の一枚の論題に行き着く、と言えなくもない。 うちの書斎にもオランダ渡りの本が何冊か並んでいるが、その向こうにウィッテンベルクの教会の扉があったと思うと、ちょっと背筋が伸びる。この秋は宗教改革500年を機に、関連の本を紹介する書評も新聞に並んだ。ハロウィンのかぼちゃを片付けたら、ルターの伝記の一冊でも手に取ってみるのが、ええ秋の夜長の過ごし方かもしれん。

#マルティン・ルター#宗教改革#95カ条の論題#ウィッテンベルク#出島#オランダ
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【特集】島原の乱380年 ・ 初出: 2017年10月

原城の風はいまも吹く——島原の乱から380年、雲仙・島原・秋月をめぐる

寛永14年(1637)に始まった島原の乱から380年。原城跡のふもとの中学生による創作劇、白秋の足跡をたどる紀行、乱を描いた屏風を公開する新しい博物館と、この秋は九州各地で乱をふりかえる話題が相次いだ。

秋の有明海は、光がやわらかい。その海を見下ろす台地に、原城跡がある。寛永14年(1637)に始まった島原の乱で、一揆勢が最後に立てこもった城だ。今年はその乱から380年の節目にあたる。 佐賀新聞のコラムは、乱の背景に、飢饉に苦しむ民への領主・松倉氏の非情な年貢の取り立てと、キリシタン弾圧への抵抗が重なった、とみる説が有力だと紹介していた。宗教の戦であり、同時に生き延びるための戦でもあったわけである。 原城跡のすぐ近く、南島原市の南有馬中学校では、3年生全員がこの乱を題材にした創作劇を、10月27日の文化学習発表会で上演するという。乱を題材にした劇の上演は11年ぶりの復活だそうだ。「学校近くの原城跡で起きた悲劇の犠牲者らに思いをはせ」たいという言葉がいい。足もとの土地の記憶を、自分たちの声で語り直す試みである。 西日本新聞は、北原白秋の足跡をたどる紀行のなかで雲仙と島原を訪ねていた。白秋は青年のころ、詩人仲間五人で九州を旅した紀行「五足の靴」で島原に立ち寄っている。記事は雲仙の老舗旅館で白秋の筆跡の掛け軸を拝見したあと、3万7千人のキリシタンが命を落としたとされる乱の「残像」をたどり、天草四郎をしのぶ鎮魂の地蔵に行き着く。わたしも旅を重ねた身として、詩人がこの地で何を見たのかは気にかかる。 福岡県朝倉市には10月21日、市秋月博物館が開館した。閉館した秋月郷土館の収蔵品を引き継ぎ、開館を記念して、島原の乱を描いた屏風などを11月5日まで特別に公開するそうだ。 夏草や兵どもが夢の跡、と詠んだのは平泉でのことだったが、原城の石垣の前に立っても、同じ思いがこみ上げてくるにちがいない。380年目の秋、海風に吹かれながら、あの城にこもった人々の祈りに耳を澄ませてみたい。

#島原の乱#原城#天草四郎#北原白秋#五足の靴#秋月博物館
▸ 2017-10-25 乱と政治(佐賀新聞)▸ 2017-10-20 天草一揆 11年ぶり復活(長崎新聞)▸ 2017-10-31 四郎をしのぶ鎮魂地蔵(西日本新聞)▸ 2017-10-21 朝倉市秋月博物館きょうオープン(読売新聞)
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【特集】ロシア最後の皇帝ニコライ2世の映画化騒動 ・ 初出: 2017年10月

皇帝の恋は、なんぼの騒ぎになったか——ニコライ2世とバレリーナの映画にロシアが揺れる

ロシア最後の皇帝ニコライ2世の、即位前の恋を描いた映画が公開をめぐって大騒動になっている。皇帝を聖人とあがめる人々の反発で社会が割れた一件を、色恋と興行の両面からのぞいてみる。

色恋を書いて身を立てた者として、この話は見過ごせん。ロシア最後の皇帝ニコライ2世の恋を描いた映画が、本国で大騒動になっているという。 映画の題は『マチルダ』。皇太子時代のニコライが、バレリーナのマチルダ・クシェシンスカヤと恋仲だった、という史実を下敷きにしたものだ。ふたりの仲は皇帝の結婚前に終わっており、当時から知られた話でもある。ところが、この映画に猛反発した人たちがいた。 ニコライ2世は1917年の革命で退位し、翌年、家族とともに銃殺された。のちにロシア正教会はこの一家を聖人の列に加えている。つまり今のロシアでは、ニコライは「最後の皇帝」であると同時に「聖人」でもあるわけだ。その聖人の若き日の色恋を、よりによってスクリーンで見せるとは何ごとか——というのが反対する側の言い分らしい。上映をやめさせようとする動きは脅しや放火騒ぎにまで及び、公開をためらう映画館も出たと伝えられる。 日経ビジネスは、この一件が社会を分断していると報じていた。革命からちょうど100年の年に、革命で倒れた皇帝の恋が国を割っている。歴史というのは、終わったあとも暴れるもんやな。 わしが面白いと思うのは、そろばんのほうや。これだけ騒がれたら、見に行かんつもりだった客まで気になって劇場に足を運ぶ。騒動そのものが、何よりの宣伝になってしもうとる。『好色一代男』を出したときも、けしからんと言う人ほどこっそり読んでおったもんだ。 もっとも、笑ってばかりもいられない。史実の人物を描くとき、どこまでが自由で、どこからが冒涜になるのか。その線引きは、国や時代によってまるで違う。遠いロシアの騒ぎは、大河ドラマの配役ひとつで盛り上がる我々にとっても、案外ひとごとではないのかもしれない。

#ニコライ2世#マチルダ#ロシア革命#映画#ロシア正教会
かわら版
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歴史かわら版 ・ 2017年10月

マルティン・ルター自筆の文、米エモリー大の図書館で発見

宗教改革500年の記念日を目前に、ルター自筆の文がアメリカのエモリー大学の図書館で見つかったそうな。五百年たっても新しい一枚が出てくるのだから、古文書探しはやめられん。

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歴史かわら版 ・ 2017年10月

幕末最強「庄内藩」無敗伝説を知っていますか 薩長も恐れた東北の「領民パワー」

戊辰戦争で最後まで負けなかった、と語られる東北の庄内藩。その強さを支えたのは藩士だけでなく領民の力だった、という読み物だ。幕末ものは薩長目線に偏りがちなので、たまには北から眺めてみたい。

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歴史かわら版 ・ 2017年10月

旧伊藤伝右衛門邸~「白蓮」と炭鉱王の暮らし~ 写真特集

筑豊の炭鉱王・伊藤伝右衛門と、歌人の柳原白蓮が暮らした福岡県飯塚市の旧邸を、写真でたっぷり見せる特集。のちに「白蓮事件」で世間を騒がせる夫婦の、豪勢な住まいぶりがよく分かる。

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歴史かわら版 ・ 2017年10月

芸術と科学の“魔術的な魅力”を感じる 『神聖ローマ帝国皇帝 ルドルフ2世の驚異の世界展』が開催

芸術も錬金術も天文学も、珍しいものなら何でも集めたという神聖ローマ皇帝ルドルフ2世。そのコレクションの世界を紹介する展覧会が、日本で開かれることになったらしい。集め癖のある者としては他人事と思えん。

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歴史かわら版 ・ 2017年10月

神戸で20万人以上を動員した『怖い絵展』が上野の森美術館で開催!

この夏に神戸で始まった「怖い絵」展が、20万人以上を集めたうえで東京・上野の森美術館にやって来た。『レディ・ジェーン・グレイの処刑』の前には、また人だかりができそうだ。

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歴史かわら版 ・ 2017年10月

ムンク美術館所蔵の《叫び》が初来日。18年秋、東京都美術館でムンクの大回顧展を開催へ

来年の秋、東京都美術館でムンクの大回顧展が開かれ、オスロのムンク美術館が持つ《叫び》が初めて日本に来るそうな。一年も先の話なのに、今からもう人の列が目に浮かぶ。

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歴史かわら版 ・ 2017年10月

細江英公写真展(ときの忘れもの)

三島由紀夫を撮った『薔薇刑』などで知られる写真家・細江英公の写真展が、東京のギャラリー「ときの忘れもの」で開かれるとのこと。戦後写真史の一頁を、プリントで確かめられる機会だ。

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歴史かわら版 ・ 2017年10月

生きているかのようなリアルさに驚愕!動物画の名手・木島櫻谷展

明治から昭和にかけて京都で活躍した日本画家、木島櫻谷の展覧会の紹介。動物画の名手と呼ばれた人で、毛並みの一本一本まで生きているかのよう、とのこと。京画壇の実力者、もっと知られてええ。

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歴史かわら版 ・ 2017年10月

鳥取の礎築いた功績紹介、池田光政の足跡たどる 県立博物館

岡山藩主として名高い池田光政だが、若いころは鳥取の城主だった。その時代に鳥取の町の礎を築いた功績を紹介する展示が、鳥取県立博物館で開かれているそうだ。

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歴史かわら版 ・ 2017年10月

アインシュタインの「幸福論」、約2億円で落札 帝国ホテルでチップ代わりに

来日中のアインシュタインが、東京の帝国ホテルでチップ代わりに書いて渡した「幸福論」のメモが、競売で約2億円の値を付けたという。チップとしては史上最高の値上がりやろう。

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歴史かわら版 ・ 2017年10月

北斎が西洋に与えた影響とは? 「北斎とジャポニスム」展で見るその関係性

北斎の絵が、海を渡って西洋の画家たちにどんな影響を与えたのか。作品を並べて見比べる「北斎とジャポニスム」展の見どころを伝える記事だ。浮世絵が逆輸入される痛快さよ。

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歴史かわら版 ・ 2017年10月

中岡慎太郎とモネの維新を知る展覧会

土佐の志士・中岡慎太郎と、フランスの画家モネ。一見つながりのなさそうな二人の「維新」を並べて紹介する展覧会の案内が、高知の情報サイトに出ていた。どんな取り合わせか気になる。

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歴史かわら版 ・ 2017年10月

龍馬・慎太郎没後150年シンポジウム「坂本龍馬・中岡慎太郎暗殺の真相を考える」

来月で近江屋事件から150年。坂本龍馬と中岡慎太郎の暗殺の真相を考えるシンポジウムの案内だ。犯人探しは百五十年たっても終わらない、幕末好きの永遠の宿題である。

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投稿狂歌コーナー ・ お題「宗教改革500年とマルティン・ルター」

ハロウィンの 仮装の列の その脇で 五百年目の 論題ひとつ

─ かぼちゃ頭の改革派 ─

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2017年10月号をお届けします。今月は、うちが宗教改革500年を、芭蕉翁が島原の乱から380年の九州を、西鶴はんがロシア最後の皇帝の恋をめぐる映画騒動を担当しました。五百年前の論題、三百八十年前の籠城、百年前の革命と、今月はやけに「節目」の多い号になりました。かわら版には、炭鉱王と白蓮の旧邸、帝国ホテルでチップ代わりに渡されたアインシュタインのメモ、来年に迫った《叫び》の来日まで並べています。神戸で20万人を集めた「怖い絵」展が上野に移ったと聞いて、うちの蔵の珍品もたまには虫干しがてら並べてみたくなりました。来月はいよいよ近江屋事件から150年。夜長のお供に、どうぞ。