ようこそ歴ファン.netへ★ 歴史ファンのためのWebマガジンですねん★ このページはNetscape Navigator 4.0以上での閲覧を推奨します★ リンクフリーです★

2018年4月号

バックナンバー
編集長: 木村蒹葭堂(大坂)

特集.txt - メモ帳
□
【特集】天草四郎の没後380年と原城跡 ・ 初出: 2018年4月

四月十二日、原城落つ——天草四郎の没後380年、古戦場に集う祈りと一夜城

島原の乱で原城が落ち、天草四郎が討たれた日から380年。命日の4月12日、舞台『魔界転生』の一行がゆかりの地を訪ねて慰霊し、原城跡では一揆まつりや一夜城、ワンコインガイドと、古戦場ににぎわいが戻ってきた。

春の有明海は霞がかかって、対岸の天草がぼんやりと浮かんで見える。その海を見下ろす台地の上で、380年前の4月12日、島原の乱は終わった。幕府軍の総攻撃で原城が落ち、総大将の天草四郎が討ち取られた日である。 この命日に合わせて、秋に上演される舞台『魔界転生』で天草四郎を演じる溝端淳平さんが、演出の堤幸彦さん、脚本のマキノノゾミさんとともに、ゆかりの地を訪ねた。島原の乱の主戦場となった長崎県南島原市の原城跡に始まり、天草四郎の銅像や墓をめぐって慰霊と鎮魂の祈りを捧げ、舞台の成功を祈願したという。一行はその後、四郎の生まれ故郷とされる熊本県の天草へ渡り、天草キリシタン館や殉教公園、天草四郎ミュージアムを訪ねている。 原城跡そのものも、この春はにぎやかだ。4月14日の「原城一揆まつり」に合わせて、城跡のそばにはベニヤ板およそ130枚を使った張りぼての「夢一夜城」が今年もお目見えした。高さ・幅ともに約15メートルほどの城だといい、そのそばには地元の婦人会などが植えた芝桜が一面に咲いている。まつりは、乱の犠牲者を追悼する催しでもある。 地元のガイド団体は、原城跡の現地案内を1人500円で引き受ける「ワンコインガイド」を始めた。原城跡は乱のあと徹底的に壊され、訪れた人が当時の姿を思い描きにくい。そこで、案内人の言葉で往時を補おうというわけだ。潜伏キリシタン関連遺産の世界遺産登録を見据え、増える見込みの旅人をもてなす工夫でもある。 この春には、歴史作家の加藤廣さんの遺作が島原の乱を描いたものだったことも伝えられた。七十五歳を目前に作家として世に出た遅咲きの書き手が、最後に選んだ題材がこの乱だったのである。 夏草や兵どもが夢の跡。わたしが平泉で詠んだ句だが、原城の石垣の前でもきっと同じ思いに打たれるだろう。ただ、ここは夏を待たずとも、春の芝桜の下に三百八十年の祈りが眠っている。

#天草四郎#島原の乱#原城跡#魔界転生#一揆まつり#南島原市
特集.txt - メモ帳
□
【特集】サダキチ・ハートマンの生涯 ・ 初出: 2018年3月〜2018年4月

出島に生まれ、アメリカで写真を論じた男——評伝『演技する道化 サダキチ・ハートマン伝』

幕末の日本に生まれ、アメリカで写真や芸術を論じた批評家サダキチ・ハートマン。その破天荒な生涯を追った田野勲さんの評伝が話題になり、4月には著者自身が日本経済新聞にその出会いを書いた。

世の中には、国と国のはざまに生まれ落ちて、どちらにも収まりきらない一生を送る人がいる。今月紹介したいのは、そんな一人、カール・サダキチ・ハートマンである。 サダキチは幕末の日本に生まれた。ドイツ人の父と日本人の母のあいだの子で、生まれは長崎の出島だったと伝えられる。幼くしてドイツへ渡り、やがてアメリカに移って、詩人として、そして芸術の批評家として名を上げた。 日本経済新聞に寄せた文章で、評伝の著者・田野勲さんは、この人物との出会いを振り返っている。35年前、1900年代に出たアメリカの写真雑誌を調べていたところ、当時の先端の芸術だった写真について、堂々たる議論を展開している書き手がいた。それがサダキチだったという。写真がまだ芸術として認められるかどうかという時代に、その値打ちを論じた批評家の一人だったわけだ。 田野さんは長年、20世紀のアメリカ文化を研究するなかで、資料のあちこちでサダキチの名に出合い、この男は一体何者なのかと、足跡をたどる旅を始めた。その成果が評伝『演技する道化 サダキチ・ハートマン伝』である。日経の見出しには「日独ハーフ アイデンティティー求めた破天荒な人生」とあり、別の見出しでは「東西結ぶ批評家」とも呼ばれていた。 うちも長崎の出島から入ってくる蘭書や舶来の品々を、首を長うして待っていた口や。その出島で生まれた子が、海を渡って西洋の芸術を論じる側に回ったというのは、なんとも胸の躍る話やないか。もっとも、サダキチの一生は順風満帆とはいかず、「道化」という評伝の題が示すように、演じるように生き、演じるように書いた人だったらしい。 日本ではあまり知られていない人物だが、東と西のあいだを行き来した知の旅人として、もっと知られてよい。これは是非とも手元に置いて、じっくり読んでみたい一冊である。

#サダキチ・ハートマン#写真史#美術批評#出島#評伝
特集.txt - メモ帳
□
【特集】炭鉱王・伊藤伝右衛門の「わが家の小史」 ・ 初出: 2018年4月

逃げられた炭鉱王の、その後の胸の内——伊藤伝右衛門「わが家の小史」が飯塚の図書館へ

筑豊の炭鉱王・伊藤伝右衛門の人生をつづった「わが家の小史」を、親族が福岡県飯塚市の図書館に寄贈した。妻・柳原白蓮に去られた「白蓮事件」のあとの心情も記されているという。

世の中には、話の筋書きのうえで「振られ役」を割り振られてしまう人がいる。筑豊の炭鉱王、伊藤伝右衛門もその一人かもしれん。 伝右衛門は、福岡県の筑豊で炭鉱を経営して財を成した実業家である。明治の終わり、その伝右衛門のもとに、伯爵家の娘で歌人の柳原白蓮が嫁いできた。ところが大正10年(1921)、白蓮は若い社会運動家の宮崎龍介のもとへ走り、新聞に夫への絶縁状まで載せた。世に言う「白蓮事件」である。世間の同情はおおむね白蓮の側に集まり、伝右衛門は金で名家の娘を買った成金、という役回りを押しつけられることになった。 その伝右衛門の人生をつづった「わが家の小史」が、親族の手で飯塚市の図書館に寄贈された。西日本新聞によれば、白蓮事件のあとの心情も記されているという。 これは値打ちのある話や。事件はこれまで、主に白蓮の側から、あるいは新聞の見出しの側から語られてきた。去られた側の男が、あとになって何を思っていたのか。帳面を見れば、その家の本当の懐具合が分かるように、本人や家族が書き残した記録を読めば、世間の噂とは違う顔が見えてくるかもしれん。 わしは『好色五人女』で、世間を騒がせた女たちの恋を書いた。けれど、恋の芝居には必ず相手役がいる。その相手役にも、言い分というものがあったはずや。炭鉱で身を起こし、一代で巨万の富を築いた男が、ただの成金で終わるはずがない。 飯塚には、伝右衛門と白蓮が暮らした旧伊藤伝右衛門邸も残っている。豪壮な屋敷を歩き、図書館で小史をひもとけば、「振られ役」の男の素顔に少しは近づけるのではないか。

#伊藤伝右衛門#柳原白蓮#白蓮事件#筑豊#炭鉱#飯塚市
かわら版
かわら版.txt - メモ帳
□
歴史かわら版 ・ 2018年04月

長州藩士・世良修蔵、半世紀ぶり法要へ 敵であっても等しく慰霊

戊辰戦争のさなか、奥羽の地で斬られた長州藩士・世良修蔵。その法要が半世紀ぶりに営まれるという。「敵であっても等しく慰霊」という言葉に、百五十年を経た和解の形を見る思いがする。

かわら版.txt - メモ帳
□
歴史かわら版 ・ 2018年04月

英雄アカハチ しのぶ 地域住民が慰霊祭 石垣・大浜

1500年、琉球王府に立ち向かった石垣島の英雄オヤケアカハチ。ゆかりの大浜の住民たちが、今年も慰霊祭を営んだそうな。王府から見れば反逆者、島から見れば英雄。見る側で顔の変わる人である。

かわら版.txt - メモ帳
□
歴史かわら版 ・ 2018年04月

「千葉常胤生誕900年記念第2回千葉氏サミット」を開催しました

源頼朝を支えた坂東武者・千葉常胤の生誕900年を記念して、千葉市で2回目の「千葉氏サミット」が開かれたという。一族ゆかりの各地の人々が集う催しで、九百年越しの親戚づきあいである。

かわら版.txt - メモ帳
□
歴史かわら版 ・ 2018年04月

究極のリア充写真家、京都で回顧展

フランスの写真家ジャック・アンリ・ラルティーグの回顧展が京都で開かれる。裕福な家に生まれ、少年時代から家族の楽しい日々を撮り続けた人で、「究極のリア充」とは言い得て妙である。

かわら版.txt - メモ帳
□
歴史かわら版 ・ 2018年04月

“写真家も憧れる写真家”サラ・ムーンの魅力 それは「奇跡の瞬間」の創造

写真家たちも憧れるというフランスの写真家サラ・ムーン。その魅力は「奇跡の瞬間」をつくり出すところにある、と説く記事だ。ラルティーグと合わせて、この春はフランス写真の当たり年らしい。

かわら版.txt - メモ帳
□
歴史かわら版 ・ 2018年04月

作家・林芙美子「貧乏コンチクショウ」展、開催! 原稿や書簡 ...

『放浪記』の林芙美子の原稿や書簡、絵画など約250点を並べる展覧会が、世田谷文学館で4月28日から7月1日まで開かれる。題して「貧乏コンチクショウ」。この題だけで、もう読みたくなる。

かわら版.txt - メモ帳
□
歴史かわら版 ・ 2018年04月

モネ それからの100年(名古屋市美術館)

名古屋市美術館の「モネ それからの100年」展の案内。モネの作品と、その後の百年の画家たちの作品を並べて、印象派の遺したものをたどる趣向らしい。睡蓮の池から、百年分の波紋が広がる。

かわら版.txt - メモ帳
□
歴史かわら版 ・ 2018年04月

(天声人語)シャボン玉飛んだ

江戸後期、近代的な手法で石鹸づくりに初めて挑んだのは蘭学者の宇田川榕菴だった、と天声人語。今春で生誕220年という。化学者としても一級だった蘭学者に、泡の向こうから拍手を送りたい。

投稿狂歌.txt - メモ帳
□
投稿狂歌コーナー ・ お題「天草四郎の没後380年と原城跡」

五百円 握りて歩く 原城の 石垣越しに 芝桜咲く

─ ワンコインの旅人 ─

編集後記.txt - メモ帳
□

2018年4月号をお届けします。今月は、芭蕉翁に天草四郎の没後380年を迎えた原城跡を、うちは出島生まれの批評家サダキチ・ハートマンを、西鶴はんには炭鉱王・伊藤伝右衛門の「わが家の小史」をお願いしました。古戦場の祈り、海を渡った混血の知識人、振られ役の成金と、今月はなかなか人間くさい顔ぶれです。かわら版には、世良修蔵の半世紀ぶりの法要、石垣島のオヤケアカハチ、生誕220年の宇田川榕菴まで。うちも出島から届く蘭書を待ちわびた口なので、サダキチの評伝はさっそく注文することにいたします。芝桜の春、どうぞ気ままに頁をめくってください。