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2022年2月号

バックナンバー
編集長: 木村蒹葭堂(大坂)

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【特集】大河『鎌倉殿の13人』の梶原景時と源義経 ・ 初出: 2022年2月

頼朝を見逃した男と、前半生が霧の中の男——『鎌倉殿の13人』に梶原景時と義経がそろう

大河『鎌倉殿の13人』に、菅田将暉の源義経と中村獅童の梶原景時がそろった。頼朝を見逃した男と、少年期が霧に包まれた男。よく知られた逸話は、どこまで史料で確かめられるのか。

2月の『鎌倉殿の13人』は、役者がそろった月だった。第7回で菅田将暉の源義経が姿を見せ、第8回「いざ、鎌倉」では寄せ集めの武士団が鎌倉に集まる。中村獅童の梶原景時が北条義時に「粗暴な男は苦手でな」と漏らす場面は、のちの義経との確執につながる台詞として話題になった。 景時はなぜ頼朝に重んじられたのか。ゴールドオンラインの記事が取り上げるのは石橋山の場面だ。1180年、挙兵したばかりの頼朝は石橋山で大敗し、土肥実平らわずかな供と山中に逃げ込んだ。追っ手の景時は、岩窟に潜む頼朝を見つけながら見逃したという。東国の武士の大半が平家を恐れて頼朝に背を向けるなか、頼朝についたのは北条時政と三浦一族くらいだった。 義経のほうはどうか。Yahoo!ニュースで渡邊大門氏が「怪しい前半生」と書くとおり、確かに言えることは多くない。平治元年(1159)に源義朝の九男として生まれ、母は常盤御前。鞍馬寺に預けられて遮那王と名乗り、のちに奥州の藤原秀衡を頼って、1180年に兄の挙兵に加わった。青少年期を物語る材料は、『義経記』などの二次史料に限られるのである。 ここで一歩引いて考えてみたい。景時の見逃しの話は痛快だが、これも後世の軍記物語が伝える逸話だ。景時といえば、讒言で義経を追い詰めた憎まれ役として語られてきた。その同じ人物が、頼朝の命の恩人としても語られる。善玉の話も悪玉の話も、ひとしく物語が運んできたものではないか。颯爽とした牛若丸と陰湿な讒言者は、判官びいきの物語がこしらえた配役だった、とまで言えば言い過ぎだろうか。 ドラマは早くも、景時を「義経の才に一目置きながら反りが合わない男」として描きはじめた。史料の空白を脚本がどう埋めるのか。物語が史料より面白くなるのは当然だが、面白ければ面白いほど、どこまでが史料なのかを確かめたくなる。考証係の性分というものである。

#梶原景時#源義経#源頼朝#石橋山の戦い#鎌倉殿の13人#大河ドラマ
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【特集】ヴィクトル・ユゴー生誕220年と『笑う男』『ノートル=ダム・ド・パリ』 ・ 初出: 2022年2月

生誕220年のユゴー、見世物小屋と大聖堂から——ミュージカル『笑う男』再演と『ノートル=ダム・ド・パリ』新訳

2月26日はヴィクトル・ユゴーの誕生日。生誕220年の今年、帝国劇場ではミュージカル『笑う男』が再演され、角川文庫からは『ノートル=ダム・ド・パリ』の新訳が出た。見世物小屋と大聖堂、二つの物語をのぞく。

2月26日は、フランスの文豪ヴィクトル・ユゴーの誕生日である。1802年の生まれだから、今年で生誕220年。その節目の月に、東京ではユゴーが二つの顔で現れた。 一つは帝国劇場のミュージカル『笑う男 The Eternal Love -永遠の愛-』。2019年に日生劇場で初演された作品の再演で、2月3日の初日は新型コロナの影響で10日に延び、19日まで上演された。3月には大阪・福岡を回る。舞台は1689年のイングランド。「コンプラチコ」と呼ばれる子ども買いに口を裂かれた少年グウィンプレンが、盲目の赤ん坊デアを拾い、興行師ウルシュスの見世物小屋で暮らしていく。グウィンプレンを浦井健治、ウルシュスを山口祐一郎が演じる。観劇レポートの筆者は、「金持ちの楽園は貧乏人の地獄によって造られる」というユゴーの言葉が、いまこそ響くと書いている。 見世物小屋の興行師が主役の一人とは、こちらにはたまらん設定だ。木戸銭を取って異形の者を見せる商売の、したたかさと哀しさ。そして帝劇の側も、初日を1週間延ばしてでも幕を開けた。演し物の中身にも、演じる側の台所にも、興行の苦労が透けて見える。 もう一つは、角川文庫から出た『ノートル=ダム・ド・パリ』の新訳(大友徳明訳)。15世紀末のパリを舞台に、大聖堂の副司教フロロ、広場で踊るエスメラルダ、鐘つき男カジモドの運命が絡み合う物語で、読みやすさを目指した抄訳だという。同じ月にカフカ『変身』、ポー『黒猫』の新訳と並んで店頭に出た。 醜いとされた男が愛を知るという筋立ては、『笑う男』にも『ノートル=ダム・ド・パリ』にも通じている。ユゴーは、見た目と身分で人を値踏みする世の中を、繰り返し書いた作家だった。220年たっても、見世物小屋の木戸の前で足を止める人の心は、さほど変わっていないのかもしれない。

#ヴィクトル・ユゴー#笑う男#ノートル=ダム・ド・パリ#フランス文学#ミュージカル#文学史
かわら版
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歴史かわら版 ・ 2022年02月

ボナールの新収蔵作品に注目。東京国立近代美術館の今期コレクション展は3月開催へ

東京国立近代美術館の3月18日からのコレクション展で、新しく収蔵したボナール《プロヴァンス風景》(1932年)がお披露目されるらしい。戦後の絵画とマンガの関係を探る「白い漫画、黒い漫画」も同時に開かれるとか。

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歴史かわら版 ・ 2022年02月

第3展示室 特集展示「もの」からみる近世 和宮ゆかりの雛かざり

国立歴史民俗博物館で2月22日から、和宮ゆかりの雛人形と雛道具の特集展示が始まった。1861年に14代将軍家茂へ降嫁した和宮は、雛人形を手もとに集め、上巳の節句には贈り合って楽しんだそうな。

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歴史かわら版 ・ 2022年02月

貫地谷しほりが樋口一葉に こまつ座『頭痛肩こり樋口一葉』が6年ぶり再演【キャストコメントあり】

井上ひさしがこまつ座の旗揚げに書き下ろした『頭痛肩こり樋口一葉』が、一葉生誕150年の今年、6年ぶりに再演される。一葉役は貫地谷しほり。東京公演は8月、紀伊國屋サザンシアターで幕を開けるそうだ。

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歴史かわら版 ・ 2022年02月

神奈川県立図書館、「前川國男館」に 設計者の名前に改称

神奈川県立図書館の本館が、4月から設計者の名を冠した「前川國男館」に改称されるそうな。日本のモダニズム建築を切り開いた前川國男(1905〜86)の仕事を、名前ごと後世に残そうという話らしい。

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歴史かわら版 ・ 2022年02月

ルイ・ルノー物語 第2回「『マルヌのタクシー』(タイプAG)が第1次大戦でフランスのピンチを救った」

1905年に登場したルノー・タイプAGは、第1次世界大戦でドイツ軍がマルヌ川を越えようとした際、パリのタクシーとして兵士を前線に運び、「マルヌのタクシー」と呼ばれたという。ルイ・ルノーの評伝連載の第2回。

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今月のこんな人、知っていますか?

ニコラウス・ステノ

地層の重なりに時間を読んだ解剖学者にして、スピノザを異端審問に告げた司教

地層は下から順に積み重なる。いまでは当たり前のこの考えを、初めてはっきり書いた人がいる。ニコラウス・ステノ(1638〜1686)、デンマーク名ニールス・ステンセンである。 コペンハーゲンの生まれ。ライデン大学で医学を修め、耳下腺の管(ステノ管)を見つけた解剖学者として名を上げた。1665年にフィレンツェへ移ってメディチ家の庇護を受け、1669年の著作『プロドロムス』で化石と地層に目を向ける。地層の縞を過去の時間を閉じ込めたものとして読み、下の層ほど古いという原則を打ち立てた、地質学の草分けだ。 ところが話はここで終わらない。ルター派の家に育った彼は1667年にカトリックへ改宗し、1675年に司祭、1677年には司教となる。その年、ローマでスピノザの『エチカ』の写本を手に入れ、9月にバチカンの異端審問機関へ報告した。ライデン時代に面識のあった哲学者を、危険な思想の持ち主として告げたことになる。1988年には、カトリックの福者に列せられている。 わたしも奇石や化石を集めるのに目がない口やから、地層に時間を読んだ人と聞けば、ぜひ話を聞いてみたい。ただ、同じ鋭い目が旧知の哲学者の写本に向いたと思うと、なんとも複雑な気持ちになるなあ。

#ニコラウス・ステノ#地質学#解剖学#スピノザ#科学史#17世紀
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2022年2月号をお届けします。大河『鎌倉殿の13人』に義経と梶原景時が出そろい、いよいよ役者がそろってきました。秋成さんは、この二人にまつわる名場面がどこまで史料で確かめられるのかを洗っています。 西鶴さんは、生誕220年のユゴーを見世物小屋の側からのぞきました。こんな人のコーナーでは、地層に時間を読んだ解剖学者ニコラウス・ステノを取り上げています。石と化石に目がないわたしとしては、書いていて筆が止まりませんでした。 かわら版には、歴博の和宮ゆかりの雛かざりや、6年ぶりの『頭痛肩こり樋口一葉』、「前川國男館」への改称、マルヌのタクシーと、雛から建築、自動車まで幅広く並びました。春が待ち遠しい季節、どれか一つでも出かけるきっかけになればうれしいです。