国内最大の蛇行剣と前代未聞の盾形銅鏡——奈良・富雄丸山古墳が揺るがす古代史の常識
全長2.3メートルの東アジア最大級の蛇行剣と、類例のない鼉龍文盾形銅鏡が出土。4世紀後半のヤマト王権と卓越した金属工芸技術に考古学界が沸き立つ。
年の初めから考古学界の度肝を抜く大発見が舞い込んできた。奈良市西部に位置する富雄丸山古墳(4世紀後半、直径約109メートルの日本最大の円墳)の発掘調査において、長さ約2メートル37センチという東アジアで過去最大の鉄製「蛇行剣」と、これまでに前例のない「鼉龍文(だりゅうもん)盾形銅鏡」が出土したのだ。 造出し部の粘土槨から現れた蛇行剣は、刀身が波打つ独特の形状をしており、儀礼用・威信財としての性格が極めて強い。2メートルを超える巨大な剣を当時の鍛冶技術で歪みなく打ち出し、長大な鞘に納めた事実は、4世紀後半のヤマトにおける金属工芸水準が従来の想定を遥かに凌駕していたことを雄弁に物語っている。また、青銅製の盾形銅鏡というのも世界初の例で、長さ約64センチの盾の形状に、神獣や霊獣を精緻に刻んだ鏡背の文様は見事というほかない。鏡と盾という二つの呪術的武具を一体化させた造形には、邪気を払う強烈な祭祀の意図が読み取れる。 この驚くべき遺物を副葬された人物とは一体何者なのか。ヤマト王権中枢を軍事や祭祀の面で支えた有力豪族の長か、あるいは工芸集団を束ねた首長か。文献批判の視点から言えば、この時代の記録は記紀の神話的記述に覆い隠されがちだが、土中から現れた圧倒的な物質的リアリティは、如何なる修辞も寄せ付けない説得力がある。机上の空論を打ち砕く土中の声に、今後も耳を澄ませたい。
国内最大の蛇行剣と前代未聞の盾形銅鏡——奈良・富雄丸山古墳が揺るがす古代史の常識
全長2.3メートルの東アジア最大級の蛇行剣と、類例のない鼉龍文盾形銅鏡が出土。4世紀後半のヤマト王権と卓越した金属工芸技術に考古学界が沸き立つ。
年の初めから考古学界の度肝を抜く大発見が舞い込んできた。奈良市西部に位置する富雄丸山古墳(4世紀後半、直径約109メートルの日本最大の円墳)の発掘調査において、長さ約2メートル37センチという東アジアで過去最大の鉄製「蛇行剣」と、これまでに前例のない「鼉龍文(だりゅうもん)盾形銅鏡」が出土したのだ。 造出し部の粘土槨から現れた蛇行剣は、刀身が波打つ独特の形状をしており、儀礼用・威信財としての性格が極めて強い。2メートルを超える巨大な剣を当時の鍛冶技術で歪みなく打ち出し、長大な鞘に納めた事実は、4世紀後半のヤマトにおける金属工芸水準が従来の想定を遥かに凌駕していたことを雄弁に物語っている。また、青銅製の盾形銅鏡というのも世界初の例で、長さ約64センチの盾の形状に、神獣や霊獣を精緻に刻んだ鏡背の文様は見事というほかない。鏡と盾という二つの呪術的武具を一体化させた造形には、邪気を払う強烈な祭祀の意図が読み取れる。 この驚くべき遺物を副葬された人物とは一体何者なのか。ヤマト王権中枢を軍事や祭祀の面で支えた有力豪族の長か、あるいは工芸集団を束ねた首長か。文献批判の視点から言えば、この時代の記録は記紀の神話的記述に覆い隠されがちだが、土中から現れた圧倒的な物質的リアリティは、如何なる修辞も寄せ付けない説得力がある。机上の空論を打ち砕く土中の声に、今後も耳を澄ませたい。
頼りなきプリンスと魔王の激突——『どうする家康』波乱の幕開けに三河武士も色めき立つ
松本潤演じる若き徳川家康と、岡田准一の圧倒的信長が火花を散らす。桶狭間の大混乱から始まる古沢良太脚本のスピード感に注目。
NHK大河ドラマ第62作『どうする家康』が堂々たる開幕を迎えた。松本潤が演じるのは、最初から完成された英雄などではなく、人形遊びを愛し、決断を迫られては右往左往する若き松平元康(のちの家康)。そこに立ちはだかるのが、岡田准一演じる織田信長だ。第一話から放たれた「待ってろよ、俺の白兎」なる強烈な台詞は、瞬く間に世の歴史好きの間で語り草となった。 桶狭間の戦いで今川義元が討たれ、大高城に取り残された元康一行。逃げるか、踏み止まるか、それとも岡崎へ戻るか。家臣団の喧々諤々の議論を前に「どうする!」と頭を抱える姿は、これまでの重厚謹厳な神君像を軽やかに解体してみせる。酒井忠次役の大森南朋や石川数正役の松重豊ら三河の古株たちが、主君を叱咤激励しながら支える様子は実に味わい深い。 大御所様も最初は一介の若武者として、迷い傷つきながら泥をすすって天下へと這い上がったのだ。古沢良太の手によるテンポの良い群像劇は、従来の戦国ファンはもちろん、これまで大河に馴染みの薄かった若い世代をも巻き込む熱気を孕んでいる。この一年、家康公の苦難と成長をじっくり見届けようではないか。
頼りなきプリンスと魔王の激突——『どうする家康』波乱の幕開けに三河武士も色めき立つ
松本潤演じる若き徳川家康と、岡田准一の圧倒的信長が火花を散らす。桶狭間の大混乱から始まる古沢良太脚本のスピード感に注目。
NHK大河ドラマ第62作『どうする家康』が堂々たる開幕を迎えた。松本潤が演じるのは、最初から完成された英雄などではなく、人形遊びを愛し、決断を迫られては右往左往する若き松平元康(のちの家康)。そこに立ちはだかるのが、岡田准一演じる織田信長だ。第一話から放たれた「待ってろよ、俺の白兎」なる強烈な台詞は、瞬く間に世の歴史好きの間で語り草となった。 桶狭間の戦いで今川義元が討たれ、大高城に取り残された元康一行。逃げるか、踏み止まるか、それとも岡崎へ戻るか。家臣団の喧々諤々の議論を前に「どうする!」と頭を抱える姿は、これまでの重厚謹厳な神君像を軽やかに解体してみせる。酒井忠次役の大森南朋や石川数正役の松重豊ら三河の古株たちが、主君を叱咤激励しながら支える様子は実に味わい深い。 大御所様も最初は一介の若武者として、迷い傷つきながら泥をすすって天下へと這い上がったのだ。古沢良太の手によるテンポの良い群像劇は、従来の戦国ファンはもちろん、これまで大河に馴染みの薄かった若い世代をも巻き込む熱気を孕んでいる。この一年、家康公の苦難と成長をじっくり見届けようではないか。
鳥居元忠
人質時代から神君を支え、伏見城の玉砕に散った愚直なる忠臣
家康公が今川家の人質であった幼少期から苦楽を共にし、生涯を主君に捧げ尽くした三河武士の鑑である。大河ドラマ『どうする家康』では音尾琢真が情味たっぷりに演じている。三方ヶ原の合戦では殿軍を務めて負傷し、長篠や小牧・長久手でも常に前線で体を張った。 その忠節の極みと語り継がれるのが、慶長5年(1600)の関ヶ原前夜における伏見城籠城戦である。会津攻めに向かう家康から留守居を託された際、わずか千八百の兵で西軍の大軍を防ぎ止める玉砕の役回りであることを互いに悟りながら、笑顔で今生の別れの杯を交わしたという。四十日に及ぶ激闘の末に討ち死にしたが、その壮絶な戦いぶりは敵味方を問わず称賛された。主君への愚直な一途さこそ、徳川創業の礎となった三河武士の魂そのものである。
鳥居元忠
人質時代から神君を支え、伏見城の玉砕に散った愚直なる忠臣
家康公が今川家の人質であった幼少期から苦楽を共にし、生涯を主君に捧げ尽くした三河武士の鑑である。大河ドラマ『どうする家康』では音尾琢真が情味たっぷりに演じている。三方ヶ原の合戦では殿軍を務めて負傷し、長篠や小牧・長久手でも常に前線で体を張った。 その忠節の極みと語り継がれるのが、慶長5年(1600)の関ヶ原前夜における伏見城籠城戦である。会津攻めに向かう家康から留守居を託された際、わずか千八百の兵で西軍の大軍を防ぎ止める玉砕の役回りであることを互いに悟りながら、笑顔で今生の別れの杯を交わしたという。四十日に及ぶ激闘の末に討ち死にしたが、その壮絶な戦いぶりは敵味方を問わず称賛された。主君への愚直な一途さこそ、徳川創業の礎となった三河武士の魂そのものである。
二メートル 超える大剣 掘り出され 振るう主は 巨人なるらむ
─ 奈良の古狐 ─
二メートル 超える大剣 掘り出され 振るう主は 巨人なるらむ
─ 奈良の古狐 ─
2023年の幕開けは、大河ドラマ『どうする家康』の威勢の良い船出と、奈良・富雄丸山古墳における世紀の大発掘という二大砲で大いに活気づきました。とりわけ長さ二メートル三十七センチの巨大蛇行剣と前例のない盾形銅鏡の出土報には、当編集部の博物蒐集癖も俄かに疼き、書斎の机の上が古代史の拓本や刀剣書で埋め尽くされた次第です。土中から届く古代の息吹と、戦国の激動を生き抜いた武士たちの息づかい。今年も歴史の奥深い面白さを、読者の皆さまと共に掘り下げてまいりましょう。
2023年の幕開けは、大河ドラマ『どうする家康』の威勢の良い船出と、奈良・富雄丸山古墳における世紀の大発掘という二大砲で大いに活気づきました。とりわけ長さ二メートル三十七センチの巨大蛇行剣と前例のない盾形銅鏡の出土報には、当編集部の博物蒐集癖も俄かに疼き、書斎の机の上が古代史の拓本や刀剣書で埋め尽くされた次第です。土中から届く古代の息吹と、戦国の激動を生き抜いた武士たちの息づかい。今年も歴史の奥深い面白さを、読者の皆さまと共に掘り下げてまいりましょう。