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2023年2月号

バックナンバー
編集長: 木村蒹葭堂(大坂)

特集.txt - メモ帳
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【特集】三河一向一揆と徳川の泥沼 ・ 初出: 2023年2月

主君を撃った軍師の若き日——『どうする家康』三河一向一揆と本多正信の反骨

松山ケンイチ演じる本多正信が一揆側に加勢。領民の怒りと信仰の力に引き裂かれる三河武士団の試練を描いた圧巻のドラマ展開。

大河ドラマ『どうする家康』は第二の山場、三河一向一揆の激闘へと突入した。寺内不入の特権を侵した若き家康に対し、浄土真宗本證寺や上宮寺などの門徒たちが一斉に蜂起。三河武士団の多くも熱心な一向宗門徒であったため、昨日までの友や親兄弟が敵味方に分かれて殺し合う泥沼の内乱へと発展した。わが大久保一族の忠世や忠佐らも身を粉にして家康公をお守りしたが、陣中はいずれの顔も苦悶に歪んでいた。 その渦中で強烈な光を放ったのが、松山ケンイチ演じる本多正信だ。戦下手で胡散臭い目付役として陣中にいた男が、重税に喘ぐ領民たちの悲鳴に耳を傾け、あろうことか一揆側の軍師として家康の前に立ちはだかる。家康に向かって鉄砲を撃ちかけ、捕縛された後も「民を慈しまぬ主に仏罰が下る」と言い放つ場面には、画面越しに背筋が凍るほどの緊張が走った。夏目広次ら忠厚な臣すらも信仰と主従の狭間で揺れ動く姿は、単なる善悪では割り切れない歴史の過酷さを突きつける。 のちに徳川幕府の最高知脳として家康を補佐し「佐渡守の知恵」と諸大名から恐れられる男の原点が、この一揆での裏切りと追放にあったという劇の構想は見事というほかない。民の声を聞かぬ領主は滅びるという手痛い教訓を刻みつけた若き家康。三河武士団の結束は、こうした痛烈な分裂と「元の野原に戻せ」という寺院破却の荒療治を経て、真の強靭さを獲得していったのだ。

#どうする家康#三河一向一揆#本多正信#徳川家康#松山ケンイチ
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【特集】信長と濃姫の三十年 ・ 初出: 2023年2月

「マムシの娘」が見つめ続けた天下布武——映画『レジェンド&バタフライ』と濃姫の真実

木村拓哉と綾瀬はるかが紡いだ織田信長と濃姫の絆。謎多き戦国女性・濃姫の存在が近年の史料再考とともに脚光を浴びる。

東映70周年記念映画『THE LEGEND & BUTTERFLY』が興行ランキングで首位を快走している。尾張の若きうつけ・織田信長と、美濃の蝮こと斎藤道三の娘・濃姫(帰蝶)。政略結婚で結ばれた二人が、激しく反目し合いながらもやがて無二の戦友となり、天下布武の果てしない夢を分かち合っていく三十年を描いた大作である。 実のところ、わたくしが筆を執った『信長公記』をはじめとする同時代の一次史料において、濃姫に関する記述は天文18年の婚姻以降、驚くほど途絶えてしまう。若くして病没したとも、道三の討死後に離縁されたとも、あるいは本能寺の変の当日まで安土城を守り信長を支え続けたとも伝えられ、その実像は長年深い謎に包まれてきた。しかし近年の安土城郭発掘調査や、『織田信雄分限帳』に記された「安土殿」なる女性の領地・待遇をめぐる古文書研究の進展により、正室としての濃姫が家中において極めて重きをなしていた可能性がにわかに現実味を帯びてきている。 映画の中で綾瀬はるかが見せる濃姫は、武芸に通じ、時に信長を叱咤して桶狭間への奇襲策を授けるなど、信長の背中を押し続けた自立した知性として描かれる。信長という巨星の影に隠れがちだった戦国女性たちの主体的な生き様が、現代のスクリーンで鮮やかに息を吹き返したと言えよう。史実の余白を想像力で埋める歴史劇の醍醐味がここにある。

#織田信長#濃姫#レジェンド&バタフライ#戦国時代#映画
かわら版
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歴史かわら版 ・ 2023年02月

富雄丸山古墳の現地説明会に4500人殺到、古代ロマンを間近に

蛇行剣と盾形銅鏡が発見された富雄丸山古墳の発掘現場が一般公開され、全国から歴史ファンが長蛇の列を作った。古墳の規模と発掘溝の深さに誰もが息を呑んだとのこと。

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歴史かわら版 ・ 2023年02月

京の冬の旅「非公開文化財特別公開」、明智光秀ゆかりの寺社が人気

毎年恒例の冬の京都特別公開。大河ドラマの熱狂も手伝ってか、妙心寺の玉鳳院や大徳寺の総見院など、戦国武将ゆかりの塔頭に熱心な参拝者が足を運んでいるそうだ。

今月のこんな人.txt - メモ帳
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今月のこんな人、知っていますか?

本多正信

一向一揆で主君に弓を引き、流浪を経て徳川幕府の頭脳となった希代の軍師

徳川家臣団の中で異彩を放つ謀将。剛勇を誇る三河武士たちからは「腰抜け」「胡散臭い男」と疎まれ白眼視されたが、政治と軍略の深謀遠慮は群を抜いていた。三河一向一揆において門徒側に立って家康に反旗を翻し、敗戦後に領国を追放された後は諸国を流浪。畿内や加賀の一向一揆などをその冷徹な眼で見聞した。 やがて大久保忠世の執り成しによって帰参を許されると、家康の側近として急速に台頭する。小田原征伐後の関東領国支配や江戸幕府の初期制度設計を一手に担い、「佐渡守の知恵」と恐れられた。武功派の本多忠勝や榊原康政らとは生涯反目し合いつつも、家康に「友」として最後まで重用され続けた。清濁併せ呑むリアリズムを貫いた、戦国屈指の頭脳派政治家である。

#本多正信#徳川家臣団#軍師#三河一向一揆
書籍紹介.txt - メモ帳
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書籍紹介 ・ 『徳川家康の決断 桶狭間から関ヶ原、大坂の陣まで10の選択』本多隆成著

家臣団分裂の危機から天下統一まで、家康苦難の選択を読み解く——本多隆成『徳川家康の決断』

今川からの自立、三河一向一揆での家臣団離反、嫡男信康の処断。幾多の危機に直面した家康がいかに決断を下し、天下への道を切り拓いたかを史料から検証した一冊。

中公新書より刊行された静岡大学名誉教授・本多隆成氏の『徳川家康の決断 桶狭間から関ヶ原、大坂の陣まで10の選択』は、家康公の生涯において天下の趨勢を左右した十の重大局面を取り上げ、その決断の背景と政治的帰結を客観的史料から鮮やかに解き明かした好著である。 今川義元の討死による独立劇に始まり、親類縁者が相食む泥沼となった三河一向一揆、武田信玄の猛威に呑まれた三方原の合戦、涙を呑んだ嫡男信康の処断、そして豊臣政権下での石川数正出奔や関東転封など、本書が描く家康の歩みは決して順風満帆な英雄のそれではない。幾度も判断の過ちを犯し、家臣の裏切りや滅亡の恐怖に震えながらも、現実的な着地点を見出して生き残りを図る姿が克明に刻まれている。 わが大久保家をはじめ三河武士団がいかに主君を支え、また時に信仰や誇りとの間で葛藤したか。三河一向一揆の章をはじめ、家臣団の動向と権力構造の変化を丁寧に追う筆致には、往時を知る者としても深く頷かされるところが多い。 大河ドラマで描かれる若き家康の苦悩と重ね合わせつつ、乱世の冷徹な政治力学を学び直す格好の道標となる一冊である。

#徳川家康#本多隆成#中公新書#三河一向一揆#徳川家臣団#戦国史
投稿狂歌.txt - メモ帳
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投稿狂歌コーナー ・ お題「本多正信の裏切り」

味方かと 思えば敵の 軍師役 正信ばかりは 油断ならぬ奴

─ 三河の藁草履 ─

投稿狂歌.txt - メモ帳
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投稿狂歌コーナー ・ お題「蛇行剣の熱狂」

くねくねと 曲がる大剣 盾の鏡 並ぶ人の列 蛇行するなり

─ 大和路の埴輪 ─

編集後記.txt - メモ帳
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寒さの底を抜ける如月、ドラマでの三河一向一揆の泥沼劇と、映画館で繰り広げられた織田信長・濃姫の壮大な物語に、歴史ファンの心は大いに熱気を帯びておりました。主君に鉄砲を向けた本多正信が流浪の果てに幕府の屋台骨を築くなど、人間万事塞翁が馬、歴史の巡り合わせの妙味には尽きせぬ感慨を覚えます。春の兆しとともに、各地の史跡や博物館でも春季特別展の便りが届き始めました。次号もまた、知的好奇心を刺激する話題を揃えてお届けいたします。