ようこそ歴ファン.netへ★ 歴史ファンのためのWebマガジンですねん★ このページはNetscape Navigator 4.0以上での閲覧を推奨します★ リンクフリーです★

2023年3月号

バックナンバー
編集長: 木村蒹葭堂(大坂)

特集.txt - メモ帳
□
【特集】特別展「東福寺」開幕 ・ 初出: 2023年3月

画聖・明兆が遺した巨幅の迫力——東京国立博物館、特別展「東福寺」に息を呑む

京都五山屈指の禅刹・東福寺の寺宝が一堂に。伝説の画僧・吉山明兆が描いた五百羅漢図や巨大仏画が現代に甦る。

上野の東京国立博物館平成館にて、特別展「東福寺」が華々しく幕を開けた。臨済宗東福寺派の大本山にして、新緑と紅葉の通天橋で名高い京都・東福寺。その創建以来伝わる至宝の数々が、かつてない規模で公開されている。 会場に入ってまず圧倒されるのは、室町初期の画僧・吉山明兆(きっさんみんちょう)による巨大な仏画群だ。高さ十メートルを超えたという幻の大仏にちなむ巨大な仏手や、長年の大規模修復プロジェクトを経て鮮やかさを取り戻した国宝・重要文化財の絵巻や障壁画の数々は、当時の禅僧たちが求めた峻厳な精神世界をそのまま映し出している。とりわけ現存する四十幅が一堂に会する「五百羅漢図」の緻密な描写と羅漢たちの表情の豊かさには、何時間眺めていても見飽きない凄まじい迫力がある。白描の鋭い線条と濃密な彩色が織りなす空間は、見る者の雑念を払い、心の深部を揺さぶる。 寺院の静寂の中で何百年もの風雪と火災を潜り抜け、守り継がれてきた美が、こうして博物館の明るい展示室に並ぶとき、守り伝えてきた名もなき僧侶や町衆の信仰と執念に深い敬意を抱かざるを得ない。旅の途上でふと訪れる京都の山門も趣深いものだが、これほどの名宝が一堂に会する好機はまさに一期一会である。春の上野の桜を愛でつつ、ぜひ足を運んでいただきたい。

#東福寺#東京国立博物館#吉山明兆#禅宗美術#特別展
特集.txt - メモ帳
□
【特集】服部半蔵と忍びの哀哀 ・ 初出: 2023年3月

「武士になりたい忍者」の汗と涙——『どうする家康』服部半蔵軍団の泥臭い活躍

山田孝之演じる服部半蔵と松本まりかの女忍び・大鼠。スマートな忍者像を覆すコミカルで過酷な潜入劇が大評判。

大河ドラマ『どうする家康』で視聴者の心を鷲掴みにしているのが、山田孝之演じる服部半蔵率いる伊賀忍者集団だ。今川方に囚われた鵜殿長照の子息を奪還すべく上ノ郷城へ潜入するくだりでは、華麗な忍術どころか、足を踏み外して堀へ転落し、縄梯子に手間取り、必死の形相で泥まみれになる生々しい姿が描かれた。 「自分は忍者ではなく誇り高き武士だ」と言い張る半蔵の面子と、日々の食い扶持のために命がけの汚れ仕事を引き受ける忍び衆の世知辛いリアリズム。松本まりか演じる女忍び・大鼠の冷ややかな眼差しと、半蔵の不器用極まる指揮ぶりとの掛け合いは、重苦しい戦乱劇の中で極上の喜劇であり、同時に切ない哀愁を漂わせている。忍びとは名ばかり、実態は日当勘定に頭を抱える町衆小作人と変わらぬ姿に、大坂の町人も「身につまされるがな」と手を打って笑ったに違いない。 忍者を過度に神秘化せず、日陰者として泥水をすすった者たちの意地と生活感を浮き彫りにした脚本の腕前は見事というほかない。銭勘定と武士の誇りの狭間で汗を流し、命を賭けて主君の無茶振りに応えようとする半蔵たち。泥臭く生き抜くその背中には、天下人たちの華やかな合戦絵巻には決して描かれない、民草のしたたかな生命力が漲っている。

#どうする家康#服部半蔵#山田孝之#忍者#大河ドラマ
かわら版
かわら版.txt - メモ帳
□
歴史かわら版 ・ 2023年03月

WBC日本代表「侍ジャパン」世界一奪還、歴史ファンも熱狂の春

栗山監督率いる侍ジャパンがアメリカを下して14年ぶりの世界一に。「侍」の名を冠したチームの結束劇に、戦国合戦さながらのドラマを見出したファンも多かった様子。

かわら版.txt - メモ帳
□
歴史かわら版 ・ 2023年03月

桜前線北上とともに全国の名城で春まつり、駿府城・小田原城が賑わう

桜の開花とともに各地の城址公園が春爛漫の賑わいに。家康ゆかりの駿府城公園では甲冑体験や武将隊の演舞に大勢の家族連れが足を止めていたそうだ。

展覧会案内.txt - メモ帳
□
展覧会案内 ・ 東京国立博物館 平成館 ・ 2023年3月7日(火)〜5月7日(日)

禅宗美術の至宝と画聖・明兆の巨幅が上野に集結——特別展「東福寺」

京都五山屈指の大禅刹・東福寺の寺宝が一堂に。長年の修復プロジェクトを終えた伝説の画僧・吉山明兆による「五百羅漢図」全四十幅をはじめ、名宝の数々を公開。

東京国立博物館で開催中の特別展「東福寺」は、鎌倉時代に摂政・九条道家によって創建され、中世禅宗文化の拠点として栄えた京都の大本山・東福寺が守り伝えてきた壮麗な寺宝を紹介する記念碑的展覧会である。 最大の呼び物は、室町初期の禅僧にして「画聖」と称された吉山明兆(きっさんみんちょう)の手による巨大仏画群と、十四年間に及ぶ大修理を完了した重要文化財「五百羅漢図」の公開だ。かつて東福寺に存在した巨大仏像の遺物や、高さ数メートルに及ぶ白描画の峻厳な線条、羅漢たちの喜怒哀楽を生き生きと描き分けた濃彩の画面は、当時の禅林における精神の深奥を今に伝える。 戦乱や大火をくぐり抜け、僧侶と町衆の手によって守り継がれてきた彫刻・絵画・墨蹟の数々。春の気配漂う上野の山で、中世日本の祈りと美の極致を間近に味わえる貴重な機会である。

展覧会
特別展「東福寺」
会場
東京国立博物館 平成館
会期
2023年3月7日(火)〜5月7日(日)
開館時間
9:00〜17:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日
月曜日(ただし3月27日、5月1日は開館)
料金
一般 2,100円、大学生 1,300円、高校生 900円、中学生以下無料
公式サイト
https://tofukuji2023.jp/

※上記は2026年9月19日時点の情報です。会期・開館時間・料金などは変更される場合があります。お出かけの前に、正確な情報は公式サイトをご確認ください。

#東福寺#東京国立博物館#吉山明兆#禅宗美術#五百羅漢図
今月のこんな人.txt - メモ帳
□
今月のこんな人、知っていますか?

音吉(ジョン・マシュー・オトソン)

遠州灘で漂流し、聖書の和訳や日英交渉に携わった数奇な運命の水主

今号の「こんな人」はこの御仁、音吉(1819〜1867)。尾張・小野浦の船乗りやったが、天保三年(1832年)、江戸へ米を運ぶ途中の宝順丸が遠州灘で嵐に遭い、一年二ヶ月も漂流する羽目になってしもうた。生き残ったんはわずか三人、辿り着いた先はなんとアメリカ大陸の西海岸。先住民マカ族に助けられたのち、英国商会の手でロンドンの土を踏んだ初めての日本人になったというから波乱万丈やなあ。 その後マカオへ送られ、ドイツ人宣教師ギュツラフの下で聖書の日本語訳に協力、世界初の和訳聖書がシンガポールで刊行される快挙も成し遂げた。故郷への帰国は幕府の砲撃に阻まれ叶わなんだが、のちに英国籍を得て「ジョン・マシュー・オトソン」と名乗り、日英和親条約の通詞まで務めた。国境をまたいで漂い続けた、数奇すぎる生涯やと思う。

#音吉#漂流民#ギュツラフ#日英和親条約
書籍紹介.txt - メモ帳
□
書籍紹介 ・ 『にっぽん音吉漂流記』春名徹著

太平洋を越え世界を駆けた漂流民の数奇な生涯——春名徹『にっぽん音吉漂流記』

遠州灘で遭難しアメリカ西海岸へ漂着、ロンドンを踏んだ最初の日本人となった音吉。幕末の鎖国体制と国際情勢の荒波に翻弄された男の足跡を追う傑作ノンフィクション。

中公文庫より刊行された春名徹氏の『にっぽん音吉漂流記』は、天保三年(1832年)の遭難から十四ヶ月余りの漂流を経てアメリカ西海岸に漂着し、地球を一周して幕末の歴史に重要な足跡を残した水主・音吉の生涯を綿密な国際的史料渉猟から甦らせた名著である。 尾張・小野浦を出港した千石船・宝順丸の悲劇から始まる本書。わずか十四歳で漂流した音吉は、先住民マカ族に救出された後、ハドソン湾会社の船でロンドンへと渡り、さらにマカオで宣教師ギュツラフの日本語聖書翻訳に協力。故郷への帰国を願って乗り込んだモリソン号が浦賀で幕府の砲撃を受けるという過酷な運命に見舞われながらも、上海やシンガポールで商人として身を立てていく。 世界中の文物を集め、異国船の漂流記録に深い関心を寄せてきたわたし(木村蒹葭堂)としても、鎖国という厚い壁の外側で、ひとりの無名な日本人が持ち前の機転と語学力で生き抜いた事実に、胸を熱くせずにはいられない。 大国がアジアへ触手を伸ばす激動の前夜、名もなき漂流民の眼を通して描かれるグローバルな幕末前史として、圧倒的な面白さを誇る一冊である。

#音吉#漂流民#春名徹#中公文庫#モリソン号事件#幕末前史
投稿狂歌.txt - メモ帳
□
投稿狂歌コーナー ・ お題「服部半蔵の忍び仕事」

忍びとは 言うな我らは 武士なれば 転んで泥に まみれる夜半

─ 伊賀の飛脚 ─

編集後記.txt - メモ帳
□

上野の東福寺展で吉山明兆による巨大仏画の神気あふれる筆致に息を呑み、一方テレビ画面では服部半蔵らが泥まみれで城壁を這い上がる姿に大笑いした弥生3月でした。春の陽光とともに全国の城郭や古道から桜爛漫の便りが届き始めております。漂流民・音吉のように大海原を渡って世界を巡るのも一興ですが、まずは足元の街道へ、古人の足跡を訪ねる散策へと繰り出してみてはいかがでしょうか。暖かな日差しを浴びながら史跡の石垣を眺める時間は、何物にも代えがたい贅沢でございます。次号もまた、知的好奇心をくすぐる選りすぐりの歴史の息吹をお届けしてまいります。