藤原宣孝の派手な参拝衣装から清少納言の機転まで、平安貴族の日常が賑やか
大河『光る君へ』、藤原宣孝の派手な参拝衣装から清少納言の機転まで、平安貴族の日常が賑やかに報じられている。
大河ドラマ『光る君へ』、藤原氏をめぐる話題が今月も賑やかや。まいどなニュースの記事によれば、藤原宣孝が御嶽詣に派手派手しい衣装で参拝し、清少納言も驚き呆れたという逸話が紹介されている。宗教的な参拝の場に何であんな格好で行くのか、当時の人々も相当ざわついたことやろう。 JBpressの記事では、清少納言が『枕草子』の「香炉峰の雪」の場面で見せた機転を、ドラマがどう映像化したかが話題になっていた。とっさの機知を映像でどう見せるかというのは演出上の腕の見せ所やが、それが反響を呼んだというのだから、うまく仕上がったんやろう。美術展ナビの回想記事でも、まひろが『荘子』に学びながら現実を物語の力で乗り越えていく様子が描かれ、さらに「百人一首」にドラマのキャストがずらり登場するという小ネタも紹介されていた。 リアルサウンドの記事では、作家の馳星周が「藤原氏とは何者か」を解説している。ドラマの人気にあやかった企画やが、あれだけ「藤原だらけ」と話題になった一族の正体を、専門家でない作家の視点も交えて整理してくれるのは、視聴者としてもありがたい話や。 派手な参拝衣装から機知の映像化、藤原氏の解説まで、切り口はさまざまやが、どれも平安貴族社会の「人間くささ」を掘り出す作業には違いない。史実の重みを損なわず、こういう軽妙な小ネタを拾い続けてくれる制作陣の目配りには、感心させられるばかりや。
藤原宣孝の派手な参拝衣装から清少納言の機転まで、平安貴族の日常が賑やか
大河『光る君へ』、藤原宣孝の派手な参拝衣装から清少納言の機転まで、平安貴族の日常が賑やかに報じられている。
大河ドラマ『光る君へ』、藤原氏をめぐる話題が今月も賑やかや。まいどなニュースの記事によれば、藤原宣孝が御嶽詣に派手派手しい衣装で参拝し、清少納言も驚き呆れたという逸話が紹介されている。宗教的な参拝の場に何であんな格好で行くのか、当時の人々も相当ざわついたことやろう。 JBpressの記事では、清少納言が『枕草子』の「香炉峰の雪」の場面で見せた機転を、ドラマがどう映像化したかが話題になっていた。とっさの機知を映像でどう見せるかというのは演出上の腕の見せ所やが、それが反響を呼んだというのだから、うまく仕上がったんやろう。美術展ナビの回想記事でも、まひろが『荘子』に学びながら現実を物語の力で乗り越えていく様子が描かれ、さらに「百人一首」にドラマのキャストがずらり登場するという小ネタも紹介されていた。 リアルサウンドの記事では、作家の馳星周が「藤原氏とは何者か」を解説している。ドラマの人気にあやかった企画やが、あれだけ「藤原だらけ」と話題になった一族の正体を、専門家でない作家の視点も交えて整理してくれるのは、視聴者としてもありがたい話や。 派手な参拝衣装から機知の映像化、藤原氏の解説まで、切り口はさまざまやが、どれも平安貴族社会の「人間くささ」を掘り出す作業には違いない。史実の重みを損なわず、こういう軽妙な小ネタを拾い続けてくれる制作陣の目配りには、感心させられるばかりや。
国土を持たない国家、マルタ騎士団の足跡と珍しいパスポート
世界最小の主権実体とも言われるマルタ騎士団、その足跡を追う写真特集と、世界で最も珍しいパスポートの正体を追う記事が並んで出ていた。
CNN.co.jpの写真特集「マルタ騎士団の足跡をたどる」を眺めていたら、思いのほか奥の深い話に行き着いた。12世紀の十字軍時代に病院騎士団として発祥し、今なお国連オブザーバーとしての地位を持つ、いわば「国土を持たない国家」のような存在やという。エルサレム、ロドス島、マルタ島と拠点を移しながら、幾度も追われつつも生き延びてきた歴史を、写真で辿るという企画自体がなかなか贅沢である。 もう一本のCNN.co.jpの記事は、マルタ騎士団が発行する「世界で最も珍しいパスポート」を追ったものやった。正式な国家ではないのに独自の外交パスポートを発行しているという、この不思議な地位こそがマルタ騎士団という組織の面白さを物語っている。以前かわら版で触れた、鳥の会話を解明した動物言語学者がマルタ騎士団のナイトに叙された一件も、思えばこの独特な地位あってこその話やったんやろう。 旅先で古い城や修道院を訪ねると、たいてい十字軍か騎士団かのどちらかの名前に行き当たる。マルタ騎士団もまさにその系譜の生き残りやが、900年近い時を経てなお、パスポートという現代的な形で存在感を示しているというのは、歴史が単なる過去の遺物ではないことを教えてくれる。国家というものの定義自体を考え直させられる、なかなか奥深い話やった。いつか実際にマルタ島まで足を運んで、その空気を確かめてみたいものやと思うている。
国土を持たない国家、マルタ騎士団の足跡と珍しいパスポート
世界最小の主権実体とも言われるマルタ騎士団、その足跡を追う写真特集と、世界で最も珍しいパスポートの正体を追う記事が並んで出ていた。
CNN.co.jpの写真特集「マルタ騎士団の足跡をたどる」を眺めていたら、思いのほか奥の深い話に行き着いた。12世紀の十字軍時代に病院騎士団として発祥し、今なお国連オブザーバーとしての地位を持つ、いわば「国土を持たない国家」のような存在やという。エルサレム、ロドス島、マルタ島と拠点を移しながら、幾度も追われつつも生き延びてきた歴史を、写真で辿るという企画自体がなかなか贅沢である。 もう一本のCNN.co.jpの記事は、マルタ騎士団が発行する「世界で最も珍しいパスポート」を追ったものやった。正式な国家ではないのに独自の外交パスポートを発行しているという、この不思議な地位こそがマルタ騎士団という組織の面白さを物語っている。以前かわら版で触れた、鳥の会話を解明した動物言語学者がマルタ騎士団のナイトに叙された一件も、思えばこの独特な地位あってこその話やったんやろう。 旅先で古い城や修道院を訪ねると、たいてい十字軍か騎士団かのどちらかの名前に行き当たる。マルタ騎士団もまさにその系譜の生き残りやが、900年近い時を経てなお、パスポートという現代的な形で存在感を示しているというのは、歴史が単なる過去の遺物ではないことを教えてくれる。国家というものの定義自体を考え直させられる、なかなか奥深い話やった。いつか実際にマルタ島まで足を運んで、その空気を確かめてみたいものやと思うている。
須賀敦子
60歳で作家デビューし、ミラノでの日々を静謐な文章で描いたエッセイスト
今号の「こんな人」は須賀敦子(1929〜1998)。若くしてイタリアに渡り、ミラノのカトリック系書店「コルシア・デイ・セルヴィ」に集う人々と交わり、現地の男性と結婚するも、夫とは数年で死別してしもうたという。帰国後は上智大学でイタリア文学を教えながら、ナタリア・ギンズブルグらイタリア文学の翻訳者として地道に活動を続けていたが、世に作家として認められたのは還暦を迎えてからのことである。1990年刊行の『ミラノ 霧の風景』が女流文学賞を受け、続く『コルシア書店の仲間たち』『ヴェネツィアの宿』などで、ミラノ時代に出会った人々の記憶を静かな筆致で描き続けた。60を過ぎてから才能が一気に開花するというのも、なんとも励みになる話やなあ。
須賀敦子
60歳で作家デビューし、ミラノでの日々を静謐な文章で描いたエッセイスト
今号の「こんな人」は須賀敦子(1929〜1998)。若くしてイタリアに渡り、ミラノのカトリック系書店「コルシア・デイ・セルヴィ」に集う人々と交わり、現地の男性と結婚するも、夫とは数年で死別してしもうたという。帰国後は上智大学でイタリア文学を教えながら、ナタリア・ギンズブルグらイタリア文学の翻訳者として地道に活動を続けていたが、世に作家として認められたのは還暦を迎えてからのことである。1990年刊行の『ミラノ 霧の風景』が女流文学賞を受け、続く『コルシア書店の仲間たち』『ヴェネツィアの宿』などで、ミラノ時代に出会った人々の記憶を静かな筆致で描き続けた。60を過ぎてから才能が一気に開花するというのも、なんとも励みになる話やなあ。
靴が語る人生の歩幅——須賀敦子が辿ったもう一人の“越境者”
自らもヨーロッパを彷徨った須賀敦子が、もう一人の“境界を越えた作家”ユルスナールの足跡を追う、晩年の代表的なエッセイ集。
今号の「こんな人」でも紹介した須賀敦子さんの著作から、今回は『ユルスナールの靴』を取り上げたい。マルグリット・ユルスナールというたら、ベルギー生まれでフランスに帰化し、女性として初めてアカデミー・フランセーズの会員に選ばれた作家である。須賀さんはこの本で、ユルスナールがヨーロッパから北米へと居場所を転々としながら自分の言葉を紡いでいった生涯を追いながら、「足に合う靴を探し歩く」という比喩を軸に据える。この靴のイメージ、読んでいくと単なる比喩にとどまらず、ミラノやパリを渡り歩いた須賀さん自身の半生とも静かに重なって見えてくるから不思議やなあ。他人の伝記を書きながら、いつのまにか自分自身の足取りをも見つめ直しているような、そんな奥行きのある一冊である。須賀さんが世を去る少し前、晩年に差し掛かって書かれた仕事という点も、あわせて味わっておきたい。
靴が語る人生の歩幅——須賀敦子が辿ったもう一人の“越境者”
自らもヨーロッパを彷徨った須賀敦子が、もう一人の“境界を越えた作家”ユルスナールの足跡を追う、晩年の代表的なエッセイ集。
今号の「こんな人」でも紹介した須賀敦子さんの著作から、今回は『ユルスナールの靴』を取り上げたい。マルグリット・ユルスナールというたら、ベルギー生まれでフランスに帰化し、女性として初めてアカデミー・フランセーズの会員に選ばれた作家である。須賀さんはこの本で、ユルスナールがヨーロッパから北米へと居場所を転々としながら自分の言葉を紡いでいった生涯を追いながら、「足に合う靴を探し歩く」という比喩を軸に据える。この靴のイメージ、読んでいくと単なる比喩にとどまらず、ミラノやパリを渡り歩いた須賀さん自身の半生とも静かに重なって見えてくるから不思議やなあ。他人の伝記を書きながら、いつのまにか自分自身の足取りをも見つめ直しているような、そんな奥行きのある一冊である。須賀さんが世を去る少し前、晩年に差し掛かって書かれた仕事という点も、あわせて味わっておきたい。
うららかな春光が降り注ぎ、桜前線が列島を駆け抜ける卯月の候となりました。今号は大河ドラマ『光る君へ』の雅びな宮廷の人間模様をはじめ、領土を持たぬまま主権を保ち続けるマルタ騎士団の数奇な歴史、さらには晩年にイタリアでの記憶を静謐な筆致で紡いだ作家・須賀敦子さんの足跡まで、古今東西の知の越境者たちに焦点を当てた特集をお届けいたしました。地中海の波濤を越えた騎士たちの祈りから、ミラノの霧の風景に佇む一人の文学者の眼差しに至るまで、時空を隔てた人間の営みはいつになっても好奇心を刺激してやまないものでございます。花散らしの風に誘われ、皆様も心豊かな読書の旅をお楽しみください。(木村蒹葭堂)
うららかな春光が降り注ぎ、桜前線が列島を駆け抜ける卯月の候となりました。今号は大河ドラマ『光る君へ』の雅びな宮廷の人間模様をはじめ、領土を持たぬまま主権を保ち続けるマルタ騎士団の数奇な歴史、さらには晩年にイタリアでの記憶を静謐な筆致で紡いだ作家・須賀敦子さんの足跡まで、古今東西の知の越境者たちに焦点を当てた特集をお届けいたしました。地中海の波濤を越えた騎士たちの祈りから、ミラノの霧の風景に佇む一人の文学者の眼差しに至るまで、時空を隔てた人間の営みはいつになっても好奇心を刺激してやまないものでございます。花散らしの風に誘われ、皆様も心豊かな読書の旅をお楽しみください。(木村蒹葭堂)